歩いて楽しむ酒③~コニャック―極上のブランデー産地(仏)~
世界三大コニャック・メゾン、マーテル社と小さな蒸溜所ギィ・ピナールの見学記。
歩いて回れるコニャック・メゾン
雰囲気はウイスキーの蒸溜所とよく似ていますが、「コニャック」の原料はブドウであり、ワインと同様に原産地呼称制度によって品質が担保されています。コニャックと名乗ることができるのは、コニャック地方の決められたエリアで、さらにグランド・シャンパーニュ(スパークリングワインのシャンパン地域とは無関係)、ファン・ボアなど地域ごとに性格づけがされ、そこで栽培されたブドウを用いて、製法の厳格な規定を満たさなければなりません。この点が穀物である大麦を原料とするウイスキーとの大きな違いです。
コニャックもブドウ畑から
途中なだらかな丘に伸びる道の両側には、ブドウ畑と麦畑が延々と広がっています。日本ではこうした景色は北海道にあるくらいでしょうか。6月の強い日差しを浴びたブドウの緑がそよぎ、黄金色の麦が波打ちます。 蒸溜所は小さな集落の一画にありました。町を歩く人はほとんど見かけない田舎町、門をくぐると蒸溜所は思いのほか広く、ショップを併設した事務棟、納屋のように見えたのがコニャックをつくる工場でした。
「コニャックもワインのように、年ごとに異なるブドウの出来で味は左右されるのか」と質問すると、意外にも返ってきたのは「重要なのはブドウの良し悪しよりも収量が多いこと」という答えでした。蒸溜するとおよそ1/3の量になってしまうのでワインをたくさん確保したいから、また収量が少なく糖度が上がったブドウはコニャックには不向きなのだそうです。
このように一緒に畑を歩き、蒸溜所を案内してもらいながら、説明を聞き質問に答えてもらう贅沢な見学の後は、試飲するコニャックの味わいが格別です。メジャーなコニャック・メゾンのゴージャスな試飲も心地よいですが、小さな蒸溜所のアットホームな見学ツアーはさらに満足度の高いものとなったのでした。
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