元大関・栃ノ心に聞く、おいしい「ジョージアワイン」と「ジョージア料理」
ジョージア出身の元大関・栃ノ心さんは引退後、駐日ジョージア大使館職員として文化交流を担うかたわら、伝統的な製法で造られる無農薬ジョージアワインとハチミツの輸入販売をプロデュースしています。栃ノ心さんにジョージアワインの魅力と、ワインに合うジョージア料理のレシピを教えていただきました。
この方にお聞きしました
栃ノ心(レヴァン・ゴルガゼ)さん
ジョージア・ムツケタ出身、元春日野部屋所属の力士で最高位は大関。
子どものころから、柔道やサンボ、チダオバなどの格闘技に親しみ、2004年世界ジュニア相撲選手権出場をきっかけに相撲を始める。角界入りは、2006年三月場所が初土俵、2008年一月場所で新十両と同時に十両優勝を果たし、同年五月場所で新入幕。ケガに泣かされながらも、2018年一月場所で幕内最高優勝、同年七月場所で大関昇進。2023年五月場所で引退。引退後は、ジョージアのワインとハチミツを輸入販売する「Royal Georgia(ロイヤルジョージア)」をプロデュース。2024年9月より、駐日ジョージア大使館職員として、文化交流の場で活躍中。
おじいちゃんの思いを胸に、ジョージアワインを日本に広めたい
実は、引退前から、引退したらジョージアワインを日本に紹介する仕事をしたいと思っていました。
これはおじいちゃんの夢でもあるんです。
―ジョージアのご実家ではワインを造られているそうですね、おじいさまもワインを造られていたんですか?
はい。ジョージアでは、自分たちが飲む分は各家庭で造るのが珍しくありません。今では、樽で熟成するヨーロピアンスタイルで造るところが多いのですが、おじいちゃんはジョージアの伝統製法にこだわって、クヴェヴリを使って造っていました。
―土に埋めた瓶(クヴェヴリ)で醸造する製法ですね。
そうです。子どものころ「このクヴェヴリで造るのがジョージアワインだ。これは素晴らしい文化で、ワインは生きてるんだよ」っていつも聞かされていて。子どもの私は、当時は意味がよくわかりませんでした(笑)。でも、今はその素晴らしさが理解できるようになりましたね。
―なるほど。
このおじいちゃんのジョージアワインへの思いを、ぜひ日本の皆さんにも伝えたいと思ったんです。
年間1トンくらいです。
―それを1年かけて家族で飲む感じですか?
はい。でも、1年もたないときもありますね(笑)。
―ジョージアの人は一般的によく飲む人が多いのでしょうか?
もちろん、飲まない人もいますが、飲む人が多いと思いますよ。うちの父は、毎日は飲みませんが、週5くらいですかね(笑)。
私もけっこう飲むほうですが、日本での生活に慣れてしまって、ジョージアに帰ったときはけっこうきついです。慣れるのに3〜4日かかりますよ。みんなよく飲むし、よく食べる。いつも10kgぐらい太って帰ってきます。
―きっとおいしいものがたくさんなんでしょうね。ジョージアでは食事にワインは欠かせないものですか?
ふだんの食事のほか、おもてなしやお祝いのお酒としても飲みます。ジョージアではなにかにつけ「○○会」が開かれていてね。友達がきたら、じゃ友達会やりましょうって感じで、○○会が始まります。
―楽しそうです!
ジョージアはほとんどがクリスチャンなんですが、クリスチャンのお祝いの日がたくさんあるので、その日もみんなで飲んで祝いますね。
スパイシーなジョージア料理によく合うジョージアワイン
ジョージア料理は、スパイスをふんだんに使うのが特徴です。にんにくもたっぷり入ります。そのスパイシーな味わいが、ジョージアワインとよく合うんです。
―ジョージアワインのどんなところと相性がよいのでしょう?
とくにクヴェヴリで造られた伝統的なジョージアワインは、絞ったブドウ果汁だけでなく、皮や種などすべて入れて発酵させるので、しっかりとした重みのある味わいになります。そこがスパイシーな料理と相性抜群なのです。
―いわゆる白ワインも果皮と種を入れるんですか?
はい。ですから、白というよりは琥珀色(アンバー)で、味わいもしっかりしていて、味の濃い料理に合わせてもバランスがとれます。
―栃ノ心さんが輸入販売をプロデュースされる「Royal Georgia」では、どんなジョージアワインを取り扱っておられるのでしょう?
私の実家のすぐ近くのワイナリーのものです。家族経営で、たっぷりの愛情をもって造られていて、私も昔から飲んでいる古い付き合いのワイナリーなんです。
ここのワインはもちろん伝統的なクヴェヴリを使った製法で、無農薬栽培のブドウを使っています。そして、何より味わいがとてもエレガントなのがセレクトの決め手となりました。
実は、ジョージアワインを輸入するのには一つ心配なことがあったんです。というのも、クヴェヴリで造るワインはしっかりとした味わいなので、日本の料理には合わないのではないかと。
けれども、ここのワインは、しっかりとした味わいがありながら、料理の邪魔をしないエレガントさがあったんです。
栃ノ心おすすめワイン3選
クヴェヴリの絵とジョージアの地図もデザインされていますよ。今回はタイプの違う3種類をご紹介します。
SAPERAVI 2021 / Red Dry Wine(サペラヴィ)
ジョージア特有のブドウ品種「サペラヴィ」はカヘティ地方でおもに栽培されています。濃いダークルビーの液色に豊かなボディの辛口赤ワイン。ジョージア国際ワインアワードで銅賞を受賞。KINDZMARAULI 2022 / Red Semi-Sweet Wine 限定ボトル(キンズマラウリ)
原産地名保護地区に指定されるキンズマラウリはジョージアでもっとも有名なワインです。甘めのセミスウィート赤ワインで、使用されるブドウはサペラヴィ。ビロードのような舌触りが魅力です。ジョージア国際ワインアワードで銅賞を受賞。栃ノ心さん
セミスウィートなので飲みやすく、食事と一緒はもちろん、食事やおつまみなしでワインだけでも楽しめます。お酒を飲むとつい食べ過ぎてしまう私にはピッタリ。
KHIKHVI 2021 / Amber Dry Wine(ヒフヴィ)
その歴史は5世紀にまで遡る、ジョージアでもっとも古い白ブドウのヒフヴィ。琥珀色に輝く液色は美しく、味わいもしっかり。煮込み料理など濃い味の料理にもよく合います。サクラアワード金賞、ジョージア国際ワインアワード銀賞を受賞。栃ノ心さん
皮と種も入れて熟成するので、白ブドウのワインですがポリフェノールたっぷり! 健康にもよいワインです。
栃ノ心直伝! ジョージアワインに合うジョージア料理
しますよ。奥さんは日本人なので、ジョージア料理を作るときは私が作ります。息子もジョージア料理は大好き。
―おかあさまのお手伝いをされていたんでしょうか?
見て覚えました。日本でどうしても食べたくなるので、自分で作れるようにね。
―今日はジョージアワインに合うジョージア料理を教えていただきたいのですが。
2品ご紹介しようと思います。どちらも、ジョージアの家庭でよく食べられているものです。味の決め手はやっぱりスパイス! ジョージアに帰ったときにはたくさん買って帰ります。
どちらも、赤・白(アンバー)を問わず相性抜群ですよ。
栃ノ心直伝ジョージア料理①|ニグジアニ・バデリジャニ(くるみとなす)
材料
- ※4〜5人分
- なす 4本
- パプリカ 小2個
- ▼(A)
- ・くるみ 60g
- ・にんにく 1かけ
- ・水 大さじ1〜2
- ・酢 小さじ1
- ・フメリスネリ* 適量
- 塩・こしょう 適量
- パクチー(フレッシュ) 適量
- *フメリスネリはコリアンダーパウダーなどで代用可
ニグジアニ・バデリジャニの作り方
①なすはヘタと両サイドを落とし、縦にスライスする。パプリカは、ヘタと種をとって縦半分に切る。②フライパンにサラダ油適量(分量外)を入れ、なすとパプリカを両面焼く。油が足りなければ足しながら、やわらかくなるまでしっかり火を通す。
④②に③をのせて折りたたみ、パクチーの葉を飾る。
栃ノ心さん
もし、余ったら全部細かく刻んで混ぜて、塩とこしょうで味を整えてアレンジを!
栃ノ心直伝ジョージア料理②|チャカプリ(牛肉の煮込み)
材料
- ※4人分
- 牛赤身かたまり肉 400〜500g
- 玉ねぎ 1個
- にんにく 3かけ
- 青ねぎ 4束
- イタリアンパセリ 1束
- パクチー 3束
- フレッシュローリエ 3枚
- タラゴン(あればフレッシュでもOK) 大さじ1
- 水 150ml
- 白ワイン(ヒフヴィ) 100ml
- 塩、こしょう 適宜
チャカプリの作り方
①牛肉は2センチの角切りにする。玉ねぎとにんにくは粗めのみじん切り。青ねぎとイタリアンパセリ、パクチーはざく切りにする。④全体を混ぜ合わせ、塩・こしょうで味を調える。
栃ノ心さん
ラム肉は5〜6月が一番おいしくなる時期。チャカプリもその時期によく食べます。ジョージアで作るときは生の梅を入れるんです。日本ではなかなか手に入らないので、私は梅干しを入れて作ったりします。
ジョージアのワインも料理も、まだまだ日本では知られていない部分が多いです。私が輸入するジョージアワインは、今回ご紹介したジョージア料理レシピはもちろん、日本料理にも合わせやすいです。ぜひ、日本のみなさんの“○○会”でお楽しみいただき、ジョージアの文化に触れていただけるとうれしいです。
※記事の情報は2024年12月13日時点のものです。
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栃ノ心さん
カヘティ地方は、夏は40度くらいあって暑いのですが夜は20度くらいまで気温が下がります。その気温差が上質なブドウを育てます。この地域から見るコーカサスの山々の景色は素晴らしいですよ。