料理酒とは? 役割や日本酒との違い、調味料のプロおすすめの3本を紹介

料理に欠かせない「料理酒」。身近な調味料なのに、日本酒(清酒)との違い、選び方など意外と知らないことが多いのではないでしょうか。そこで、料理酒の役割や使い方などの基礎知識、代用できる調味料、おすすめの料理酒を調味料のプロに教えていただきました!

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教えてくれたのはこの方

下倉 樹(しもくら いつき)さん

■調味料エバンジェリスト(伝道師)
■一般社団法人国際食学協会 理事

調味料を自分で選ぶチカラを育む講座、子ども・親子向けワークショップ、メーカー見学ツアーなど、調味料の魅力に迫る企画を行う。講座数2,000件以上、延べ2万人以上参加。調味料メーカー見学、全国240件以上。メディア出演多数。3姉妹の母。山梨県出身、神戸市在住。

下倉 樹 公式サイト「きっず~な」
www.kids-na.jp/

下倉 樹(しもくら いつき)さん

料理酒とは? どんな原料でできている?

―そもそも料理酒とは何でしょうか。定義はありますか?

料理酒とは、その名の通り、料理に使うお酒のこと。料理酒には法律的な定義がありません。メーカーによっても異なり、さまざまな料理酒が販売されています。明確な定義付けが難しい調味料です。

料理酒は、飲む日本酒と同様に、酒税法上の「清酒」に該当するものもあれば、アルコールに糖類や有機酸などを加えて造る「合成清酒」に区分されるものもあります。また、食塩を含む場合「発酵調味料」に分類されるものもあり、原料や製造法が異なる、複数のタイプが存在します。

アルコール度数は13~14%と、一般的な清酒よりも1%ほど度数の低い商品が多いかなと思います。

―料理酒はどのような原料でできているのですか?

基本は、米、米麹です。料理酒の種類には、大きく分けて、食塩を添加したものと、添加していないもの2つがあります。お酒は酒販免許がある場所でしか販売できません。でも食塩を2%加えて、お酒として飲めないように「不可飲処置」を施すと、酒税の対象外になり、酒販免許のない場所でも販売できるようになります。

海水で塩分3%なので、2%はだいぶ塩味を感じます。食塩添加の料理酒を使う場合は、味付けの加減に注意が必要ですね。

他にも、醸造アルコールを加えているものや、糖類、酸味料といった添加物を加えているものもあります。

料理酒の役割・効果

料理酒イメージ

―料理酒には調味料として、どのような役割・効果があるのでしょうか?

主に以下の5つの効果があります。

① 臭みを取る
アルコールが含まれているので、アルコールの蒸発とともに臭みを飛ばす働きがあります。また、料理酒に含まれる有機酸やアミノ酸は酸性で、肉や魚の臭みはアルカリ性なので、それらが合わせることで臭みが中和されるという効果もあります。

② 旨みやコク、深みを与える
料理酒は食用のご飯、うるち米で造られるため、一般的な飲む日本酒(清酒)と比べると、アミノ酸、有機酸といった成分を多く含んでいるのが特徴です。この雑味成分が他の調味料と合わさることで、旨みやコクが生まれます。

③ 食材に味を染み込みやすくする
アルコールの分子は、他の分子よりも小さいため、食材に味を染み込みやすくする効果があります。例えば肉じゃがを作るとき、先に料理酒を入れておくと、じゃがいもの中にアルコールが先に入ってくれるので、その後に入れるみりんや醤油などの味付けが中まで浸透しやすくなります。

④ 食材から風味、成分を引き出す
アルコールの働きにより、食材から風味や成分を引き出す効果もあります。例えば出汁を取るとき、昆布や水と一緒に料理酒を入れると、旨みを昆布から外に出しやすくしてくれます。

⑤ 食材をやわらかくする
アルコールには水分と混ざり合う特性があり、分子も小さいため、食材の内部の水分を保ち、やわらかくする効果があります。

5つの効果のうち、ほとんどはアルコールによる効果のため、他のお酒にも当てはまりますが、他のお酒にないのが②の「旨みやコク、深みを与える」であり、料理酒の最大の特徴と言えます。

料理酒の選び方・効果的な使い方は?

―料理酒の選び方のポイントを教えてください。

選び方の基準としては、以下がポイントです。

・食塩添加か、無添加か
・糖類、酸味料などの添加物が入っているか、いないか
・醸造アルコールが入っているか、いないか

料理をよりおいしく作るには、食塩無添加で、添加物や醸造アルコールが入っていない、米と米麹だけで造った料理酒がおすすめです!

―より効果的に使うにはどうすれば良いのでしょうか?

味付けをする前、料理の初期段階に入れると効果的です。煮物を作るときや出汁を取るときは、水と同時に料理酒を加えると良いと思います。加熱する前に食材や水と一緒に料理酒を入れて、火を加えていくと、より料理酒の効果を発揮できますよ。

量は少量でOK。煮物1人分なら、小さじ1くらいで十分です。

料理酒と日本酒、みりんの違い

―料理酒と日本酒(清酒)の違いを教えてください。

料理酒は調理用、日本酒(清酒)は飲用に造られており、まず原材料の米が違います。料理酒は食用のご飯、うるち米で造るのに対し、日本酒(清酒)は酒用の米、酒造好適米(酒米)で造ります。うるち米には油分やたんぱく質が含まれており、それらがお酒になることで、アミノ酸や有機酸が生まれるのです。

それから料理酒は、精米歩合の低い米を使うのに対し、日本酒(清酒)は精米歩合の高い米を使用します。精米歩合が高ければ高いほど、すっきりとした味わいで雑味が少なくなりますが、料理酒用の米はあえてあまり精米をせず、雑味を残します。これは、雑味が料理にコクや旨みを与えるためです。

―では、料理酒とみりんの違いは何でしょうか?

ここではみりんの中でも、酒税法の対象になる「本みりん」を例にお話ししますね。

一番大きな違いは甘みです。本みりんはエキス分(糖分やアミノ酸など)が40%以上のものと酒税法で定められています。日本酒(清酒)や料理酒と比べると、糖分の含有量が多いのが本みりんの特徴です。糖分により、甘みを付ける、照りを出すなどの料理酒とは違う効果を得られます。

原材料や製造工程も違います。本みりんの原材料である米は、もち米です。また、日本酒(清酒)や料理酒は米を発酵させてアルコールを造りますが、本みりんはアルコールの中に原料を入れ、糖化熟成させて造ります。

<日本酒(清酒)、料理酒、本みりんの違い 一覧表>

▼横スクロールでご覧ください

  日本酒(清酒) 料理酒 本みりん
原材料 米、米麹
※純米酒以外は醸造アルコールを含む
米、米麹
食塩、酸味料、甘味料を含むものもある
米、米麹、焼酎または醸造アルコール、(糖類
※糖類は含むものと含まないものがある
米の種類 酒造好適米(酒米) うるち米 もち米
精米歩合
※白米が約90%
大吟醸酒:50%以下
吟醸酒:60%以下
純米酒:約60%
本醸造酒:70%以下
65~90% 約90%
製造方法 糖化・アルコール発酵 糖化・アルコール発酵 糖化熟成
アルコール度数 約15~20% 約13~14% 約14%

料理酒は日本酒、焼酎、みりん、白ワインで代用できる? 代用におすすめの調味料は?

料理酒がないとき、代わりに使える調味料はあるのでしょうか。日本酒(清酒)、焼酎、みりん、白ワイン、それぞれを代用した場合の効果やデメリット、ポイント、そしてこの他に代用としておすすめの調味料を下倉さんに教えていただきました。
 

■日本酒(清酒):代用するなら「純米酒」がベスト! 料理酒と似た成分

日本酒
純米酒の効果
「純米酒」は料理酒と同じく、米と米麹で造られており、米本来の旨みや甘みを残し、アミノ酸が少し含まれているので、料理酒と似ています。吟醸、大吟醸などの値段が高い日本酒(清酒)ではなく、安いお酒、普通酒で十分です。吟醸、大吟醸は精米歩合が高いため、味わいがすっきりしすぎてしまい、料理酒の代用には適していません。

純米酒も料理酒と比べるとアミノ酸の含有量が少ないので、料理のコクを出したり、味をまとめたりする力は弱いです。アミノ酸の効果を出すには、2倍くらいの量を入れると良いですよ!
 

■焼酎:臭みを取る効果はあるが、独特な香りが難点。煮切りがポイント

焼酎
焼酎の効果
焼酎にはアルコールが含まれているので、料理酒と同じように、臭みを取る、素材の中に味を染み込ませるという効果はあります。

ただ、焼酎は独特な香りがあるので、それが料理に残る可能性があります。また蒸留酒でアミノ酸が含まれていないので、コク出し、味をまとめるには向いていません。

それから、料理酒と比べてアルコールの度数が高いので、アルコールを飛ばす「煮切り」を十分に行う必要があります。
 

■みりん:臭み取り、コク出しには効果的だが、甘みに注意

みりん
みりんの効果
みりんには、アルコール、アミノ酸や有機酸が含まれているので、成分としては料理酒と似ています。臭みを取る、旨みやコクを出す、食材に味を染み込ませるなど、料理酒と同じような効果があります。

しかし糖分が多く、甘みを付けることの方が役割としては大きいので、料理酒の代わりに使うと、甘みが強くなってしまいます。量に加減が必要です。
 

■白ワイン:料理によっては代用可。コク出し、味をまとめるには✕

白ワイン
白ワインの効果
アルコールという意味では、料理酒と同じ、臭みを取る、食材に味を染み込みやすくするといった効果はあります。

白ワインは料理酒と同様に、アミノ酸や有機酸を含んでいますが、香りや風味が強いため、料理の旨みやコクは感じづらいです。また、ワイン特有の香りがどうしても残ってしまうので、料理を選びます。洋食、肉料理に使うには適しています。


■純米酢:コク出し、味をまとめる代用調味料としておすすめ!

純米酢
純米酢の効果
「米酢」は料理酒の原材料と同じ、うるち米で造った日本酒を酢酸菌によって発酵させたものです。中でも「純米酢」は原材料が米のみで、米の甘みや風味をより感じられます。アミノ酸が含まれているので、旨みやコク、深みを出す効果があります。

酢の醸造工程でアルコール成分はほぼ残らないため、アルコールで臭みを飛ばすという効果はありません。しかし酸が含まれている分、酸性の酢とアルカリ性の魚や肉の臭みが中和されることで、臭みを取ることができます。

有機酸が多く含まれているので、味をまとめる効果もあります。さらに、たんぱく質を分解させたり、カルシウムを変性させたりする性質があるため、肉料理や魚料理がやわらかく仕上がります。

食材に味を染み込みやすくする、食材から風味や成分を引き出すといった効果はありませんが、それらはみりんを加えることで補えますよ。

料理酒の代用として使うときは、隠し味程度に小さじ1杯くらい入れるのがおすすめです。

調味料のプロおすすめ! 料理をよりおいしくする料理酒3選

最後に、約240軒もの調味料メーカーの蔵を取材してきた下倉さんに、おすすめの料理酒を3本教えていただきました。特徴、おすすめポイント、適した料理など、下倉さんの解説付きでご紹介します。
おすすめ料理酒


① 福来純 純米料理酒|白扇酒造

福来純 純米料理酒
■DATA
購入価格:1,432円(税込)
原材料:米(国産)、米麹(国産米)
内容量:720ml
アルコール度数:14.5%
産地:岐阜県
容器:瓶


一般的な日本酒(清酒)が3段仕込み*のところ、「4段仕込み」なのが特徴です。4段階目に「もち米」を投入することで、アミノ酸の含有量を増やし、旨みやコクをアップさせています。

白扇酒造さんは、従業員が生き生きと商品に自信をもって取り組んでいるのが印象的。そんな蔵で造っている料理酒だからこそ、間違いないです。これを使うとやっぱり料理のおいしさが引き立ちます。

白扇酒造さんはみりんもとってもおすすめなので、ぜひ料理酒とみりんを合わせて使っていただきたい! 肉じゃがなどの煮物、和食全般におすすめです。

*段仕込み:蒸米、麹、水を数段階に分けて仕込み、醪(もろみ)を造る日本酒の製法のこと。3回に分けて仕込む「3段仕込み」が一般的。


② こんにちは料理酒|大木代吉本店

こんにちは料理酒
■DATA
購入価格:1,210円(税込)
原材料:米(国産)、米麹(国産米)、酒粕
内容量:720ml
アルコール度数:16%
産地:福島県
容器:瓶


「7段仕込み」で、一般的な料理酒と比べてアミノ酸の含有量が約4倍もあります! 熟成させるとコクや旨みが生まれる「酒粕」、精米していない「玄米」などの原料を加えることで、アミノ酸の含有量を増やしているのです。

旨みが強いので、使用量は通常のレシピの半分でOK。1本あたりの金額は高く感じるかもしれませんが、少量ずつ使えると考えるとお得ですよ。プロの料理人が使う料理酒としても有名で、家の料理をワンランク上げたいときにおすすめです。

おすすめの料理は、魚料理。魚の煮付けだけでなく、アクアパッツァなどの洋食にも使えます。料理酒はオリーブオイル、バターとも相性が良いんです。そうした材料を使う洋食でも、魚の臭み消し、旨みやコクの引き出しに役立ちます。


③ 料理専用米だけの酒‎|キング醸造

料理専用米だけの酒 
■DATA
購入価格:833円(税込)
原材料:米(国産)、米麹(国産米)
内容量:900ml
アルコール度数:13%
産地:兵庫県
容器:紙パック


「日の出みりん」で有名なキング醸造さん。120年以上の歴史をもつ老舗のメーカーで、料理酒やみりんという名脇役的な調味料を、長年追求されてきた信頼と実績があります。料理酒だけでもたくさん種類がありますが、中でもおすすめなのが「食塩無添加」タイプです。

紙パックであることもポイントですね。使い切った後のゴミのことを考えると、紙パックは環境にやさしいですし、瓶よりも軽くて、スリムパックなので持ちやすいです。お手頃価格で手に取りやすいのもメリット。酒蒸しなど、たっぷり使いたいときにおすすめです。

* * * * *

普段何気なく使っている料理酒。さまざまな役割・効果があり、日々の料理を支えてくれる大切な調味料であることがわかりました。

メーカーによっても多彩なタイプの料理酒があるので、お気に入りの1本を見つけてみると料理がより楽しくなるかもしれません。

料理酒を使って料理するときには、ぜひ参考にしてみてください!

※記事の情報は2024年10月4日時点のものです。
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