絶品!イタリアの魚醤コラトゥーラで作った簡単パスタ

タイの「ナンプラー」やベトナムの「ニョクナム」など、アジア圏ではおなじみの「魚醤」ですが、イタリアにも「コラトゥーラ」という名前の魚醤があるそうです。今回の「イタリア式家飲みコラム」では、南イタリアの漁師町で食べられている、コラトゥーラを使った絶品パスタの作り方をご紹介します。日本の「しょっつる」でも代用可能だそうですよ。

ライター:京藤好男京藤好男
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アマルフィの漁師町で作られるイタリア唯一の魚醤

好評放送中のNHK-Eテレ『旅するイタリア語』のディレクター、Hさんがロケ先のアマルフィ近郊で購入してきた、ちょっと変わったイタリアの調味料で驚きのパスタを作ってくれた。その調味料とは、

colatura[コラトゥーラ]

カタクチイワシから作られる、イタリアでただ一つの「魚醤」だ。魚醤というとアジア圏で使われるもの、という先入観があった私は、イタリアにもあったのかとちょっと驚いた。そのcolaturaは、アマルフィ海岸唯一の漁師町Cetara[チェターラ]で生産されている。小樽にイワシの身をぎっしりと敷き詰め、塩をしてその上にさらに身を積み重ねていく。この根気のいる仕込みは、すべて手作業だ。そうして5ヶ月ほど寝かせ、抽出される魚醤は1樽からわずか200本程度という貴重なもの。しかし、その飴色のトロリとした液体には、発酵した魚の旨味がしっかりと凝縮され、複雑で深い味わいが楽しめる。最近では日本にいても、ネット通販で手に入る。

魚醤にぴったりのシンプルパスタ

さて、そんなイタリアの魚醤造りの現場を取材したHさんは、「これで作るパスタが絶品なんです」と、いきなりコラトゥーラのスパゲッティを私に振舞ってくれようとした。その場所がなんと、キッチンではなく、編集スタジオの控え室だったからびっくりだ。その作り方が実に簡単。

材料: 2人分

材料

  • スパゲッティ 200グラム
  • ニンニク 1片
  • オリーブオイル 大さじ4杯
  • コラトゥーラ 大さじ2杯
  • イタリアンパセリ 適量

作り方

  • パスタを茹でる。そのとき塩味はまったく付けず、お湯だけで茹でる。
  • ニンニクは潰して、小片にする。そのニンニクと、オリーブオイル、コラトゥーラ、パセリを混ぜ合わせ、ニンニクの香りが液に移るよう10分ほどおく。
  • 茹で上がったパスタを、2の液に混ぜ合わせて出来上がり。注意点として、ニンニクは、火を通してはいけない。生のままなので、ニンニク自体は食さない。
魚醤にぴったりのシンプルパスタ
その日、Hさんはスタジオでも食べられるようにと「パスタ茹で容器」を使って、電子レンジでスパゲッティを用意してくれた。それにコラトゥーラなどの液を混ぜ合わせただけだが、魚醤の風味とニンニクの香りがなんともいい塩梅に絡まり、シンプルパスタのお手本のようであった。一口味見したHさんも、「うん、これ現地の味と変わりないです」と自信たっぷり。こんなに簡単に本場の味が再現できるのも魅力だが、それ以上に、日本人の口に合う、どこか懐かしい味だという気がした。きっとそれは、魚醤の風味がどこか醤油に似ているからだろう。そう思っていると、Hさんがとっておきの裏ワザを教えてくれた。

「コラトゥーラがなくても大丈夫。「しょっつる」で代用したら、味はほとんど変わらなかったです。和風パスタが好きな方なら、しょっつるを使って、パセリを大葉に変えたら、きっと気に入りますよ」

なるほど、日本を代表する魚醤「しょっつる」なら、コラトゥーラに風味が大変よく似ている。大葉を刻んで入れたら、まさに日本人好みの味になるだろう。実は後日、ある北部出身のイタリア人男性にこのパスタの話をしたら、「僕はきっと、そのパスタは食べられないな。魚の匂いが苦手だから」と言っていた。彼は日本の醤油も苦手だという。でも醤油に慣れた日本人ならきっと、コラトゥーラはうってつけの調味料だと思う。

「我が家では、このパスタを飲み会の「締め」に出しています。すごくシンプルで、塩味がとても優しいので、最後の一品として受けてますよ」

Hさんはそうも教えてくれた。これは家飲みのいいヒントだ。パスタで締め、という発想も新しい、と目からウロコの思いだった。

魚醤風味に相性抜群の白ワイン

さて、その時に合わせたワインも相性抜群であった。以前にも書いたが、和風味、特に醤油系の味付けの料理には「辛口モスカート」がおすすめだ。モスカートとは「マスカット」のことで、普通は甘口ワイン用として使われる。だが、そのブドウを使用して、あえて辛口に仕上げると、マスカットの甘い風味は残しながら、口当たりはドライでさっぱりしたワインになる。今回、Hさんが合わせてくれたのは、

Moscato Salento[モスカート サレント]

イタリアの最南端プッリア州のI.G.T.「上級テーブルワイン」だ。コストパフォーマンスにすぐれた、ボディのしっかりした白である。これを魚醤風味のパスタに合わせると、甘い果実味が全体を包みつつも、キリッとしたミネラル感が溶け合うようにパスタと絡んで、絶妙なハーモニーを奏でていた。このように味わうと、「辛口モスカート」はまるで吟醸酒を飲むニュアンスになる。辛口モスカートといえば、ほかにシチリア島で作られるZibibbo[ズィビッボ]も有名だ。「魚醤のパスタに辛口モスカート」。家飲みの新しい締めとして、取っておきの組み合わせである。


※記事の情報は2017年11月14日時点のものです。
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