【ウクライナのお酒】ウォッカと果実酒で乾杯! リアルな家飲みとは?

日本で暮らすウクライナ人、ナタリアさんのお宅でリアルな家飲みを拝見! 前編ではウクライナの家庭料理をご紹介しましたが、今回は気になるお酒事情について。実り豊かなウクライナでは、果実を漬けたウォッカやフルーツドリンクが大人気でした!

メインビジュアル:【ウクライナのお酒】ウォッカと果実酒で乾杯! リアルな家飲みとは?
前回の「ウクライナの家庭料理」についての記事はこちら!

風邪薬にもなる? ウクライナのウォッカ「ホリールカ」

手間ひまかけて作られるウクライナの家庭料理、それに合わせて飲まれているお酒ってどんなものなんでしょう?

「ウクライナのお酒として代表的なのは『ホリールカ』、いわゆるウォッカのこと。ただし強いお酒なので、みんなが毎日飲んでいるわけではないと思いますよ。たいていの人はゆっくりできる休日やお祝いの時に飲むわね」とコバリョバさん。
かわいらしい陶器の人形に入ったホリールカは、ウクライナ土産としても人気
可愛らしい陶器の人形に入ったホリールカは、ウクライナ土産としても人気

ホリールカにはトウガラシや胡椒を漬けたものもあり、漬ける食材によって味も変わるそう。胡椒のホリールカは、現地では「風邪薬」としても重宝され、ナタリアさんも「くいっと飲んで一晩眠れば、翌朝には元気!」と太鼓判。アルコール40度のウォッカに胡椒…、たしかに体が温まりそうです。

収穫した果実や木の実で作る「ナスチーイカ」と「ウズバル」

ところで、ウクライナの国土面積はロシアに次いでヨーロッパ第2位の広さ。地域差のある多様な自然環境のおかげで、ウクライナの森では様々な種類のキノコやベリー、木の実を収穫できます。

そのためウクライナの家庭では果実酒「ナスチーイカ」づくりが盛ん。作り方は日本の梅酒に似ていて、収穫した果実や木の実を砂糖とともにウォッカに漬け込みます。
ウクライナに住むナタリアさんのお母さんが新クルミで作ったというナスチーイカ。どことなく紹興酒に似た味
ウクライナに住むナタリアさんのお母さんが新クルミで作ったというナスチーイカ。どことなく紹興酒に似た味

もうひとつ、ノンアルコールですがウクライナならではのドリンクとして注目したいのが「ウズバル」。簡単に言えば“ドライフルーツのジュース“です。

冬、厳しい寒さが続くウクライナでは、冬場のビタミン源として夏に収穫した梨やリンゴ、プラム、ベリー類を燻して保存する習慣があり、ウズバルはその燻したドライフルーツを茹でて戻し、そこに砂糖を加えたものなんだそう。
アデリーナさんも大好きだと言うウズバル。ピッチャーはウクライナ伝統の焼き物
アデリーナさんも大好きだと言うウズバル。ピッチャーはウクライナ伝統の焼き物
少し飲ませてもらいましたが、たしかにドライフルーツのほのかな甘さが感じられます。が、そこにスモーキーな香りが加わって、うーむ、これはかなり独特…。今までに味わったことのない不思議な飲み物。でも飲むほどにクセになりそうです。

さて、ドリンクも準備万端。いよいよお待ちかねの乾杯です!
グラス左から、ホリールカ、グーズベリー(セイヨウスグリ)のナスチーイカ、ウズバル
グラス左から、ホリールカ、グーズベリー(セイヨウスグリ)を漬けたナスチーイカ、ウズバル

ウクライナ語で乾杯は「ブーヂモ!」

ウォッカやナスチーイカ、ウズバルのグラスを手に、「ブーヂモ!」の掛け声で乾杯。
ウクライナ語で乾杯の掛け声は「ブージモ!」

ナタリアさんとコバリョバさんが「スマーチノホ(召し上がれ)」と言ってまずお皿に取ってくれたのは、ウォッカと一緒に食べると最高!という前菜の数々。ニンニクの香りやビネガーの酸味が効いたものが多く、強いウォッカがキケンなほど進みます。
黒パンに豚の脂身の塩漬け「サーロ」を乗せたものと、ガーリックを塗ったもの、炒めた玉ねぎとチーズを具にしたパイ
黒パンに豚の脂身の塩漬け「サーロ」を乗せたものと、ガーリックを塗ったもの、炒め玉ねぎとチーズを具にしたパイ
パプリカとトマト、ガーリックマヨネーズを焼いた茄子で巻いたもの。ディルを上から散らす
パプリカとトマト、ガーリックマヨネーズを焼いた茄子で巻いたもの。ディルを上から散らす
イワシのマリネ。現地ではマッシュポテトと一緒に食べることも
イワシのマリネ。現地ではマッシュポテトと一緒に食べることも

続いて、【前編】でも詳しく紹介したボルシチ、そしてみんなでおしゃべりしながら作ったヴァレーニキ。ウクライナでは、お祝いごとなど大勢で食卓を囲むときは、前菜、スープ、メイン、デザートとコース仕立てで料理を出すのがしきたりなんだそうです。
ナタリアさんのボルシチは、肉の代わりに豆を入れた優しい味わい。野菜はビーツのほか、キャベツやニンジンなどがたっぷり
ナタリアさんのボルシチは、肉の代わりに豆を入れた優しい味わい。野菜はビーツのほか、キャベツやニンジンなどがたっぷり
マッシュポテトとキノコを包んだおかず系ヴァレーニキ。皮は驚くほどもっちりで、主食になる食べ応え。ボルシチ同様、スメタナをかけて食べる
マッシュポテトとキノコを包んだヴァレーニキ。皮は驚くほどもっちりで、主食になる食べ応え。ボルシチ同様、スメタナをかけて食べる
砂糖をまぶしたチェリーを包んだ、デザート系ヴァレーニキ。朝食として食べることもあるそう
砂糖をまぶしたチェリーを包んだ、デザート系ヴァレーニキ。朝食として食べることもあるそう

「お茶でもどう?」を真に受けるべからず

それにしてもナタリアさんたちのなんと気配り上手なこと。取材で訪れた私たちをゲストとして扱ってくれ、お皿は空いていないか、お酒は入っているかを気遣ってくれます。

  「そもそも人を家に招待するのが好きな国民性なんです。玄関先で立ち話なんてありえません。ウクライナで『家でお茶でも飲みませんか?』と誘われたら、それは『料理を一緒に食べましょう!』という意味。それがウクライナ人の気質なんです」とナタリアさんは言います。
パイをすすめてくれるナタリアさん

家族や親戚・友人たちを招いてのにぎやかな食卓。お酒が進むにつれさらに会話がはずみ、そのうち歌や踊りも飛び出します。ウクライナには伝統民謡が数多くあり、人が集まれば歌うのがおきまりなんだそうです。なんとなく沖縄の人が泡盛を飲みながら島唄を歌うイメージに似ていますね。

食卓を通して見えてきたウクライナの人の心

実は今回の取材のために、ナタリアさんとコバリョバさんは二人で手分けして料理を準備してくれたそう。その料理をウクライナの陶器に盛り、さらにご本人たちは刺繍の美しい伝統衣装を身に着けてのもてなしです。
アデリーナさんとナタリアさん
コバリョバさん

そうまでしてくれたのは、もちろん自国の文化に純粋に誇りをもっているから、というのもあると思いますが、それと同じくらい「ロシアに隣接する国」ではなく「ウクライナ」として知ってほしい、という気持ちがあったようです。

「ソ連時代のプロパガンダの影響でロシアとウクライナはよく混同されるけれど、言葉も違えば歴史も違う。ウクライナにはオリジナルの伝統や食文化もあるし、自然も豊か。そのことをぜひ伝えたくて」とコバリョバさん。

この日用意された食卓には、まさにそんな思いが溢れていました。ナタリアさん、コバリョバさん、アデリーナさん、素敵なウクライナの家飲みを見せていただき、ありがとうございました!
集合写真

※記事の情報は2019年8月28日時点のものです。


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