〈ファミマのバターコーヒー〉開発を担った人にインタビューしてきました。

話題のバターコーヒーを、いつでも手軽に飲めるように開発されたファミリーマートのバターコーヒー。製品化されるまではどんな苦労があったのか? その開発の一翼を担った人にお話しいただきました。

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前例の全くない商品を作る、その難しさ

不二製油株式会社は、大阪府に本社がある食品素材加工会社。チョコレート用油脂や大豆たんぱくなど、独自性の高い数多くの商品を揃え、グローバルに事業を展開している企業です。今回はその東京支社を訪ね、バターコーヒーの核ともいえる「バターとMCTオイル」の乳化工程を担う、営業部門の角南拓哉さんと開発部門の湯澤優一さんにお話をうかがってきました。

—— ファミリーマートのバターコーヒーで、御社はどのような役割を担っているのですか。
角南 弊社が行っているのは、グラスフェッドバターとMCTオイルを調達して弊社で「乳化」させて、バターコーヒーの原料を作ることです。弊社が納めた原料とコーヒー会社さんのコーヒーを合わせてパッケージにして、製品となります。
不二製油株式会社  営業部門 角南拓哉さん
不二製油株式会社  営業部門 角南拓哉さん
—— 不二製油さんのノウハウや技術がバターコーヒーに生かされているのでしょうか。
湯澤 バターコーヒーは、コーヒーにグラスフェッドバターとMCTオイルという、性質の異なるオイルを混ぜて、油浮きなどさせることなく、混ざった状態で安定させる必要があります。バターとMCTオイルをいきなりコーヒーに混ぜるのは難しいので、あらかじめ水と混ぜ合わせて乳化させておくわけです。そうすることで、後でコーヒーと混ぜやすくなります。乳化というのは、水と油のように分離している液体を、分散させて混ぜ合わせた状態にすることです。たとえばよく振ったドレッシングや、パスタソースなどは水と油が乳化しています。牛乳も、牛の身体のなかで水と脂肪が乳化されたものなのです。弊社はホイップクリームやチョコレートの原料などの製造を業務としていて、油と水を乳化させることでは長年の蓄積があるので、今回の開発に参加させていただけることになりました。

—— バターコーヒー開発のお話が来たときはどのようなことを思われましたか。
湯澤 前例のない商品なので、戸惑うことが多かったです。発注いただいたファミリーマートのご担当者は、完成品のイメージを明確に持っていらっしゃいました。でも私たちは、バターコーヒーというものを見たことさえありません。

—— 前例のないものを作る、ということがそもそも課題だったわけですね。
湯澤 はい、通常の開発では、まずは見本になる最終商品をモデルとして買ってきて調べることからはじめます。でも今回は手本にするものがどこにもない、初めての製品です。まず文献を読んで、こういうものかと推定するところからはじめました。ただ、文献にも詳細がきっちり出ているというわけでもなく、書いてあるバターやMCTオイルの量もかなり幅があります。これくらいのものならこの技術とコストでできる、というパターンをいくつかがご提示して、何度も話し合いをして製品のイメージを決めていきました。
 
不二製油株式会社 開発部門 湯澤優一さん
不二製油株式会社 開発部門 湯澤優一さん
—— バターはどのようなものを使っているでしょうか。
角南 今回、バターはグラスフェッドでなければいけない、ということが至上命題でした。グラスフェッドは牧草飼育のことです。いまでは乳牛の多くは穀物を与えて育てるグレインフェッドで、グラスフェッドは少数派です。弊社はグラスフェッドバターの取り扱い経験がなかったので、どこから仕入れたらいいのか、ゼロから探し回りました。探し回った結果、ニュージーランドのメーカー様に行き当たり、品質の高いグラスフェッドバターを供給いただけることになりました。

—— MCTオイルについてはいかがですか。
角南 弊社はもともと、南の国でとれるパーム油などを多く扱っています。MCTオイルは弊社の関連会社が製造しているので、そこから調達することで、調達でも物流でも、安定的に供給ができています。

—— バターとMCTオイルはどのような方法で乳化させるのでしょうか。
湯澤 家庭ではドレッシングやパスタソースを泡立て器で混ぜますが、工場では「ホモゲナイザー」という機械を使います。圧力をかけながら水と油を乳化させるのです。弊社の製品は、マヨネーズとかホイップクリームのように「水のなかに油を混ぜる」ものから、チョコレートのように「油のなかに少量の水を混ぜる」ものまで幅広くラインナップしているので、さまざまなものの乳化で蓄積した技術とノウハウがあります。

—— 今回の乳化で、難しいことはありましたか。
湯澤 乳化自体はそれほど難しいことではないのですが、今回はバターとMCTオイルの量が比較的多かったので、クリーミーな口当たりと長期安定性を確保することに苦労しました。そのため原料を加える順番や量、製造方法の検討など、かなり試行錯誤しました。

発売後は自らまとめ買い。毎日飲んでダイエットに挑戦中

ファミリーマートのバターコーヒー
—— 開発の過程で特に印象に残っているのはどのようなことですか。
湯澤 とにかく、ファミリーマートのご担当者の熱意がすごかったということですね。今回は最初から「どうしてもこういうものをやりたい」と、とても強くおっしゃっていました。弊社もその熱意にお応えしていいものを一緒に作りましょうと、ご提案を繰り返しました。

—— 完成した製品を実際に飲んでどう思われましたか。
角南 私は毎日飲んでいます。私はふだんデザートの原料などを担当しているので、試食の機会も多いものですから、けっこうお腹まわりが気になって、健康診断の数値にも出てしまうんです。今回せっかく担当になったわけですから、これを機にまず自分が書籍の通りにやってみようと。発売以来ずっと朝ご飯はこれだけ、というプチダイエットにチャレンジしています。すごく腹持ちがよくて、お昼ご飯の時間が過ぎてもお腹が空かない。いま自宅の冷蔵庫に常時20本ぐらいストックしています。自宅のすぐそばにファミリーマートのお店があって、定期的に大量買いするので、店員さんには「この人なんなの・・・」と思われているでしょうね(笑)。

—— 味についてはいかがですか。
角南 美味しいと思います。もともと私はブラックコーヒーがあまり得意でないので、これまでは、抹茶ラテとか、甘いカフェラテを飲んでました。そんな私でも、このバターコーヒーは無糖とはいえしっかり濃厚なので、違和感なく飲めます。

湯澤 私は逆にブラック派でなんです。ただ職場でもブラックコーヒーを続けて飲んでいるとどうしても胃が痛くなってくるというのもあって、そういうときにこれを飲んだら、とてもいいと思いました。牛乳だと若干甘さも出てしまいますが、これは甘くないのにクリーミーさがあって、それがいいんです。

—— 最後に、完成した商品に対する思いを一言お願いします。
湯澤 今回のように、最終商品が他に存在しないものを作るのは入社して初めての経験でした。これを目指してつくる、これよりおいしいものを作る、そういうことではなく、手本にするものがゼロの商品を作るというのはワクワクするような体験で、お仕事をいただいて光栄だったと思います。ブラックコーヒーでは刺激が強過ぎるけれど甘いのも苦手という方は、ぜひ一度試していただきたいですね。このバターコーヒーは甘くないけどクリーミーで、美味しく飲んでいただけるのではないかと思います。

角南 当初バターコーヒーは想像もできないものでした。作って果たして受け入れられるのか不安な面もありましたが、ファミリーマートのご担当者をただただ信じて、チームで追究してひとつのものを作ることができて、本当にやってよかったなと感じています。発売されてからいま店舗で見てみると、まとめ買いされている方も多い。私もはじめはそうでしたが、バターが入ってるけど健康にいいとか本当? と半信半疑の方もいらっしゃると思いますが、我々も文献などを参考にしながら試行錯誤を繰り返し、突き詰めて作ったものです。一度は試していただいて、その感想をSNSなどでどんどん発信していだければうれしいですね。


—— 今日は貴重なお話をありがとうございました!
 
バターコーヒー 
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※記事の情報は2018年1月16日時点のものです。
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