粋(いき)な花見を極めよう。野暮(やぼ)にならない九箇条
いよいよお花見の季節が到来。でも……場所とりが大変だし、寒かったり騒々しかったり、トイレに困ったりする花見ってホントに楽しい? 何か苦しくない? ここに提案するのは、心から楽しめる花見をしたい人のための、「粋(いき)な花見」九箇条。さらば野暮(やぼ)で苦しい花見よ!
其の壱。散りぎわこそ花見のピーク。
桜前線が上がってきたら居ても立ってもいられなくなって、開花宣言と同時にそれーっと公園に押しかける。ちょっと待った、そいつは野暮(やぼ)というもの。まだちょっと寒いんじゃない? それに桜っていうのは、意外に幹の真っ黒さが目立つから、咲き始めはさほどキレイにみえません。ピークは満開も過ぎて桜吹雪が舞い落ちるころ。あたりが散った桜のじゅうたんになって初めて、桜の美しさも儚さもジ~ンと心に沁みてくる。こんな時分におもむろに仲間を誘って出かけるのが粋(いき)な花見なのです。
其の弐。直前に決めて少人数で三々五々楽しむ。
大人数のスケジュールを合わせて、何週間も前から花見の日を決めるのが、現代人の常でしょう。でも花見は自然が相手です。寒かったり雨が降ったら気持ちよくない。無理してやるものじゃありません。山登りと同じで、今だ! と思った時にササっと出かけたい。そのために大人数じゃなくて、行けるだけの少人数でやる。そして三々五々集まって各自が好きなときに帰る。あいつが居た年、居なかった年。毎回参加者が違うのも、違った思い出になっていいものです。
其の参。やるのは昼間。サッと飲んで切り上げる。
朝から確保した場所に長いこと居座って、未明まで飲んで泥酔するなんていうのは野暮(やぼ)の極み。花見はサッと飲んで、昼間のうちに切り上げたいものです。その地面はみんなのもの。良い場所ほど、他の人にも使ってもらいましょう。サッと切り上げて、夕方の部、夜の部と三回転するくらいに場所を譲るのが、粋(いき)な花見のありかたじゃあないでしょうか。飲み足りなければ、暖かい居酒屋とか誰かの家で、二次会をやればいいのです。
其の四。日当たり良好な、人があまり狙わない場所で。
花見の場所取り合戦が繰り広げられるのはキレイな桜の枝の下。そこを一刻も早く確保したくて気分が泡立ちます。なぜでしょう。そりゃあ満開の枝の下が花見の風情満点なべスポジだからでしょ。と、思いますか? 実は絶対にそうはならないのです。なぜなら、そこには他の人々もワラワラと押し寄せてくるから。たちまち騒々しく、窮屈になってしまうのが自然の摂理なのです。はじめから枝の下を対象外にすれば気がラクです。①暖いこと。日が当たって風が吹かない ②トイレから遠過ぎず近過ぎず ③あまりの人ごみは避ける これを原則として場所を決めてみましょう。
其の五。布の敷物は必須。小さなテーブルはなお良し。
花見にはブルーのシート。あのシートは日本人の心にしみ込んだロングセラーアイテムですが、ちょっと粋にやりたいならば、少し敷物に凝ってみたいもの。ペルシャじゅうたんを敷こうというのではありません。生地屋さんで売っている、メーター数百円の布で充分です。布の上に座っているというだけで、人はなぜか心豊かになるものです。これに、飲み物のグラスを置く小さなテーブルがあれば落ち着いて飲めるのでさらに言うことなし。折畳みのアウトドア用テーブルなど、いろいろなものが出ています。
其の六。料理の基本は「花見弁当」。美味しさ腹7分目。
花見と言えば古くから「花見弁当」。食べ物に無頓着すぎるのもなんですが、逆に凝りすぎるのも野暮です。何も花見でお腹をいっぱいにしなくてもいいではありませんか。お腹が空いたら後で居酒屋でも誰かの家にでも行けばいいのです。鍋やバーベキューを試みる猛者もいますが、今じゃたいていの公園で禁止されてるし、何より準備と後片づけが大変です。ここはひとつ、花見弁当に立ち返ってみましょう。市販のものでも手づくりでも、美味しい弁当を一人ひとつ用意してそれを肴に飲む。腹7分目くらいと心に留める。なかなか粋(いき)なもんです。
其の七。酒は常温で飲む。
ビールや缶チューハイを少し飲むのはいい。でもこれらを冷やしておくとすると、もともとそれ自体が重いうえに、氷だのクーラーボックスだのと、荷物がやたらと大きくなります。そのうえお腹も膀胱も膨らんで、トイレに行ったら行列で万事休すということにも。それにまだ外でビールを飲むのは寒いです。花見の風景に似合うのは日本酒、ワイン、ウイスキーなど。常温で美味しく飲める酒なのです。荷物が軽くなるぶん、紙コップではなく、ワイングラスやぐい飲みを用意すれば、味も雰囲気もグッと上がります。
其の八。昼寝や読書など自由に過ごす。
ようやく訪れた春。みんなで陽気に盛りあがるのもいいでしょう。でも、飲まなくちゃ、食べなくちゃと、まるで、「千と千尋の〜」の暴食夫婦みたいに、次から次と飲んだり食べたりしなくてもいいのではないでしょうか。春の陽射しを浴びながら、昼寝したり読書したり、静かにゆっくり過ごす花見があってもいいのです。花を見て春を全身で感じる。飲み食いだけが目的ではないと、発想を変えてみましょう。
其の九。「来た時よりもキレイに」は粋(いき)の最低条件。
ビンや缶は言うに及ばず、シートからクーラーボックス、鍋やコンロ、バーベキューピットまで。花見で賑わった翌朝、公園のゴミ箱には実に大量の、多様なものが捨てられています。立つ鳥後を濁さず。ここは矜を正しましょう。花見の場所はみんなの場所です。最低限、自分の座った場所だけでも「来た時よりもキレイに」をパーフェクトに実施したとき、粋(いき)な花見は完結するのです。
※記事の情報は2019年3月12日時点のものです。
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