イングランド発! 新進気鋭の蒸留所「レイクス蒸留所」のウイスキーを飲んでみた

ウイスキーと言えばスコットランドが有名ですが、そのお隣のイングランドに今、世界から注目を浴びる新しい蒸留所があります。イングランド発の新進気鋭の蒸留所、レイクス蒸留所の魅力とは?

ライター:青田俊一青田俊一
メインビジュアル:イングランド発! 新進気鋭の蒸留所「レイクス蒸留所」のウイスキーを飲んでみた
名古屋の酒類卸イズミックの青田が、いま注目のお酒の情報をバイヤー目線でお届けします! 今回はイングランドに設立された新しい蒸留所のウイスキーをご紹介します。

今注目したい、イングランドに設立された新しい蒸留所

昨今の事情でバーに飲みに行くことが少なくなった今日この頃、ハードリカー、とりわけウイスキーを飲む機会がめっきり減ってしまい、新しいウイスキーとの出会いはまったくと言ってもいいくらい無くなってしまいました。

酒屋さんで買おうにもそれなりのお値段はするし、フルボトルではなくちょっと飲みたいだけだし…と、家飲み用に買うというのもそれはそれでハードルが高いんですよね。

そんなわけで今回は、久しぶりにウイスキーをご紹介させてもらおうと思います。

ご紹介するのは、イングランドでウイスキー、ジン、ウォッカなどの蒸留酒を幅広く手掛ける「レイクス蒸留所」のウイスキーです。

レイクス蒸留所とは?

レイクス蒸溜所
レイクス蒸留所は2014年に設立され、ウイスキーの初リリースが2018年という新しい蒸留所です。

以前、ウイスキー界の新しい波として取材に伺った台湾のカバラン蒸留所の初リリースが2008年だったので、それから比べると本当につい最近できた蒸留所という印象です。

ウイスキーと言えば大多数の方がスコッチウイスキー、すなわちスコットランドという国を連想されるのではないでしょうか。ご存じのようにスコットランドのウイスキーの歴史は数百年と長く、まぎれもなく世界を代表するウイスキーの産地です。

しかし、今回ご紹介するレイクス蒸留所が位置するのはイングランド。スコットランドと同じく英国であるものの、イングランドのウイスキー、いわゆるイングリッシュウイスキーという言葉はあまり聞かないのではないでしょうか。

それもそのはず、イングランドでのウイスキー造りには、ロンドンにあったリー・ヴァレー蒸留所が1903年に閉鎖されてから2003年にコーンウォールのヒーリーズ・リンゴ園にてウイスキー蒸留が再開されるまで、100年という空白の期間があったのです。

そんなウイスキーの歴史が途絶えてしまっていたイングランドの地に、2014年に設立されたのがこのレイクス蒸留所です。
レイクス蒸溜所
レイクス蒸留所はイングランド北西部、イングランドで最も美しい風景と称される湖水地方に位置します。ユネスコ世界遺産になっているレイク・ディストリクト・ナショナルパークや、ヨーロッパで最も水流の速いダーウェント川ときれいな水に恵まれたエリアで、そのダーウェント川のほとりにある築160年の農場の中にレイクス蒸留所は建設されました。

レイクス蒸留所のキーパーソン、ダヴァル・ガンジー氏のこだわり

このレイクス蒸留所のウイスキー製造の重要なカギを握るのが、ウイスキーメーカーのダヴァル・ガンジー氏です。この人がとにかくすごいんです。

ダヴァル・ガンジー氏は、マッカラン、ハイネケンでのキャリアを経て、2016年からウイスキーメーカーという肩書でレイクスのチームに参加しています。ただ参加当初から順風満帆というわけではなかったようで、すぐに壁にぶつかったそう。それは当時のニューメイクスピリッツの味わいが、自分の理想としている味わいとは違っていたからです。

自分の理想の味わいを実現するためにチームリーダーとなった彼は、蒸留所の生産プロセスそのものの見直しを図ります。原酒の製造法から熟成の方法、ブレンドに至るまですべての工程に携わり見直しを図ったそうです。今もなお、理想の味わいを実現するため全工程に一貫して携わるというスタンスは変えておらず、蒸留所のすべてを熟知しているというのですから驚きです。
ダヴァル・ガンジー氏
ダヴァル・ガンジー氏
ダヴァル・ガンジー氏が一貫して全工程に携わるのは、‟ホリスティックなウイスキー造り”という理念によるものです。ホリスティックとは「全体」とか「バランス」のような意味。この理念は、ウイスキー製造における無数にある作業や工程の一つひとつを独立したものだとは考えず、一部に手を加えると全体のバランスが変わってしまう、大きな絵画のようなものだと捉えることから生まれています。
レイクス蒸留所
そんなダヴァル・ガンジー氏の理想とする味わいのポイントとなっているのが‟シェリー樽”です。レイクス蒸留所は設立当初、バーボン樽での熟成が主体だったそうですが、ダヴァル・ガンジー氏が参加してから、これをシェリー樽での熟成主体に替えていったそうです。これによって、深みのある複雑な味わいのレイクスのウイスキーの個性が確立されたのです。

また伝統についても、ダヴァル・ガンジー氏の哲学があります。彼は伝統に敬意を払いますが、それに縛り付けられることも良しとはしておらず、常に進化することが重要だと考えているそうです。イングランドに位置するレイクス蒸留所は、スコッチウイスキー協会(SWA)の定める規定に従わなくても問題がないため、スコッチの伝統にとらわれない自由な発想のウイスキー造りができ、この点もまたレイクスのウイスキーの個性となっています。

こうしてレイクス蒸留所は、2018年6月に最初のシングルモルトであるジェネシス(Genesis)を限定99本にてオークションで発売したわけですが、そのNo.1ボトルはなんと7,900ポンド(当時のレートで約110万円)で落札され、新蒸留所の製品の値段としては世界記録になったそうです。

こんなに魅力的なウイスキー、もちろん飲んでみたい。というわけで、いよいよお楽しみの試飲のお時間といきましょう。

レイクスウイスキー「THE ONE」を飲んでみた

ご紹介するのはレイクスの「THE ONE」というシリーズ。

その名のとおり″唯一無二”をコンセプトに、レイクスのシングルモルトにスペイサイド、アイラのスコッチグレーンとモルトウイスキーをブレンドした、ブレンデッドウイスキーのシリーズです。
レイクス THE ONE
今回は、手に取りやすく試しやすいミニチュアボトルでご紹介します。
レイクス THE ONE ポートカスク
最初は「ポートカスクフィニッシュ」から。

「ポートカスクフィニッシュ」は、レイクスのシングルモルトを中心に、スペイサイドとアイラの厳選されたグレーンウイスキーとモルトウイスキーをブレンドしたブレンデッドウイスキー。説明だけ見ると割とスコッチっぽい雰囲気でしょうか。

ダイレクトに味わいたいのでストレートで試してみます。
レイクス THE ONE ポートカスクフィニッシュ
色はそこまで濃くなく、香りは少しスモーキーな印象。口の中でスパイスのニュアンスとスモーキーなフレーバーが広がります。スコッチっぽさもあるのですが、スコッチの代表的なものと比べるとこちらのほうがクセがなく味が柔らかい印象で、上品にまとまっています。ストレートで飲むのがやっぱり正解でした。
 
レイクス THE ONE シェリーカスクフィニッシュ
お次は「シェリーカスクフィニッシュ」です。

「シェリーカスクフィニッシュ」はヨーロッパ産オークのオロロソの樽とペドロヒメネスのシェリー樽で熟成させたブレンデッドウイスキー。ダヴァル・ガンジー氏はシェリー樽に強いこだわりを持っているということだったので、レイクスらしさが分かりやすいウイスキーだと思われます。
レイクス THE ONE シェリーカスクフィニッシュ
先ほどのポートカスクフィニッシュと比べると、こちらのほうが熟成感のある濃い色合いです。シェリーらしい少し酸味のあるフルーティな印象の香り。少しウッディな風味とナッツの味わいが口に広がり、芳醇な余韻が長く続く贅沢な味わい。これまた上品かつ華やか。語彙力が低くなりますが、すごくおいしい。これもストレートで飲んだほうが良さが分かりますね。
 
レイクス THE ONE オレンジワインカスクフィニッシュ
最後は「オレンジワインカスクフィニッシュ」です。

「オレンジワインカスクフィニッシュ」はオレンジのワインで風味づけされたアメリカ産オーク樽にて熟成したウイスキー。

オレンジワインと言っても、最近日本でもよく見かけられるようになった、白ワイン用ブドウを果皮ごと仕込んだ色がオレンジのワインではなく、スペインのアンダルシア州ウエルバで生産される「ヴィノ・デ・ナランハ」というオレンジピールを浸透させて香りをつけた、リキュールを添加したワインのことです。ちなみにこちらと混同するのを嫌がってか、オレンジ色のワインのことをアンバーワインとあえて呼んでいるソムリエもいます。

この「ヴィノ・デ・ナランハ」のカスクを使ったウイスキーはかなり珍しいと思いますので期待大です。
レイクス THE ONE オレンジワインカスク ミニチュア
今回ご紹介した中では最も薄い色合いです。マーマレードのような柑橘の香りが特徴的で、フルーティな甘みが口の中で広がり、ほんのりとしたオレンジピールの苦みがアクセントになっています。ドライフルーツとの相性が良さそうな味わいです。こちらもやっぱりストレートがおすすめですね。個人的にこれが一番好きです。

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イングリッシュウイスキーということで、スコッチウイスキーに寄せた味わいなのかと思っていましたが、スコッチのニュアンスもありながらも、プラスそれを何か進化させたような完成度の高いウイスキーでした。いくぶんマイナーなウイスキーで、購入するのは躊躇するかもしれませんが、ミニチュアボトルでしたら1,000円くらいなので、お気軽にお試しいただけるのではないかと思います。

いつか世の中が元に戻ったら、この素晴らしいウイスキーをイングランドまで体感しに行きたいものです。
 

【商品概要】ザ・ワン ポートカスクフィニッシュ ミニチュア

  • 生産国:イギリス
  • 原材料名:モルト、グレーン
  • アルコール度数:46%
  • 容量 / 容器:50ml / 瓶
  • 参考小売価格:850円(税抜)
  • 輸入元:雄山㈱

【商品概要】ザ・ワン シェリーカスクフィニッシュ ミニチュア

  • 生産国:イギリス
  • 原材料名:モルト、グレーン
  • アルコール度数:46%
  • 容量 / 容器:50ml / 瓶
  • 参考小売価格:850円(税抜)
  • 輸入元:雄山㈱

【商品概要】ザ・ワン オレンジワインカスクフィニッシュ ミニチュア

  • 生産国:イギリス
  • 原材料名:モルト、グレーン
  • アルコール度数:46%
  • 容量 / 容器:50ml / 瓶
  • 参考小売価格:850円(税抜)
  • 輸入元:雄山㈱
※記事の情報は2022年1月31日時点のものです。
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