宮田ナノ『もしもし、こちらは夜です』の再現レシピ《肴は本を飛び出して67》
宮田ナノ先生が描くコミックエッセイ『もしもし、こちらは夜です』より、「焼きたてあつあつのホルモン」を再現! 先生が子ども時代、夏休みの深夜にこっそり食べた思い出の味を、ビールと一緒に楽しみました。家飲み大好きな筆者が「本に出てきた食べ物をおつまみにして、お酒を飲みたい!」という夢を叶える連載・第67回です。

いつもの夜に潜む小さな楽しみや発見が愛おしい。

※画像をクリックすると大和書房のページにジャンプします。
イラストレーター&漫画家の宮田ナノ先生が小さい頃から大人になった今までに過ごしてきたさまざまな「夜」について描いたコミックエッセイ。
かわいらしいイラストと、ほのぼのしたり胸がキュンとなったりするエピソードがとても素敵で、眠れない夜に何度も繰り返し読んでいる大切な1冊です。
子どもの頃は「適正睡眠時間にやたら厳しい父の言いつけにより」22時には就寝させられ、夜の世界への憧れを募らせたという宮田先生。
宮田ナノ /大和書房『もしもし、こちらは夜です』「はじめに」より
夜中に喉が渇いてこっそり台所で氷を食べるのが楽しみだった子ども時代、昼間は存在感のない振り子時計の音がなんだか怖かったり、親類が集まってみんなで夜更かしする大晦日が“1年のなかでいちばん心躍る日”だったり…。
そして、大きくなって夜の自由を得てからは、ベランダでお酒を飲みながら星や月、街の様子を眺めたり、落ち込んだ様子の夫さんに望遠鏡で星空観察をさせてあげたり、夜の自販機との物語を思い出したり、深夜に押入れのなかを大探索したり、初めてのバーに行ったりと、融通無礙に夜を楽しまれている様子がとってもいい感じ。
宮田ナノ /大和書房『もしもし、こちらは夜です』「第2話 夏の夜のベランダ」より
宮田ナノ /大和書房『もしもし、こちらは夜です』「第2話 夏の夜のベランダ」より
宮田ナノ /大和書房『もしもし、こちらは夜です』「第4話 夜の自販機さんぽ」より
宮田ナノ /大和書房『もしもし、こちらは夜です』「第6話 3年ぶりのスーパー銭湯」より
そういえば、自分のなかにはどんな「夜」が残っているのでしょうか。
思い起こしてみれば、現在五十路の私が昭和の子どもだった頃は夜通し開いているコンビニやスーパー、ゲームセンターなどは(ほぼ)なく、離島の田舎ゆえに深夜のテレビやラジオも縁がなく「夜は寝るもの」が基本だったように思います。
それでも、仕事と大家族の家事をフルでこなしていた母が寝落ちしながらも好きな絵本を読んでくれたこと、台風の風の音が怖くて暗い階段をこわごわと上がって両親の寝室をノックしたこと、中学生の時にこっそりお祭りの夜店でアルバイトをして大人の気分を味わったけど後でバレてすんごく怒られたことなどを懐かしく思い出しました。
そして、大人になってからは、ここには書けないような夜の思い出がたっぷりありますね…。主に酒がらみの失敗談ですがね…。
『もしもし、こちらは夜です』ここを再現
寝る前に食べちゃダメとわかっているけど、いや、わかっているからこそ食べたい。食べずにいられない。それが夜食の魅力であり魔力なんですよね〜。
第8話には、宮田先生のなんともヘルシーな夜食スタメンが紹介されていました。 み、見習いたい!
宮田ナノ /大和書房『もしもし、こちらは夜です』「第8話 暗闇ハンバーガー」より
夏休みにはおばあちゃんの家に親戚が集まり、賑やかに過ごすのが宮田家の慣例だったよう。
宮田ナノ /大和書房『もしもし、こちらは夜です』「第3話 いとことの夜ふかし」より
折よく早寝見張り番のお父さんが不在だったこともあって、宮田先生はめーちゃんと一緒に起きていることを決意します。
宮田ナノ /大和書房『もしもし、こちらは夜です』「第3話 いとことの夜ふかし」より
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宮田ナノ /大和書房『もしもし、こちらは夜です』「第3話 いとことの夜ふかし」より
いつもよりちょっとはしゃいだめーちゃんが選んだのは冷凍ホルモン(!!!)。
し、渋すぎやしませんか〜〜〜。
小中学生の女の子ふたりの夜食として意外すぎるほど意外なこのセレクト。そのギャップにやられ、ぜひ再現してみたいと思いました。
作中では、どんなホルモンをどんな味付けで食べたかは描かれていないので、前回に続いて想像での再現です。
お品書き
- 焼きたてあつあつのホルモン

豚ホルモンの焼肉は味噌だれやニンニク醤油だれが主流のようなので、双方をミックスする形で、焼肉のたれにニンニクや味噌を追加して味付けしてみます。
〈材料〉
・豚ホルモン(大腸、小腸、胃袋など)
・焼肉のたれ(すりおろしニンニクと味噌をプラス)
〈作り方〉
① 豚ホルモンは生姜やネギの青い部分を加えた湯で数回茹でこぼし、臭みをとって洗い流す。
② ①をフライパンで炒め、たれを回しかける。
◾食べてみました
私が今いる沖縄の石垣島でも豚ホルモン(こちらでは豚の中身といいます)はおなじみの食材。スーパーの精肉売り場や冷凍肉コーナーでいつでも買うことができます。
おそらくこれだろうとあたりをつけて買い込み、特製だれで焼き付けました。
部位によってプリッとしたりシコッとしたりするホルモンに濃厚なたれが絡んでたまらない酒のつまみです。架空のいとこ(成人済み)と乾杯するつもりで、ビールのグラスを2つ用意して撮影しました。そしてひとりで両手に持って交互に飲みました。うめえ!
宮田先生とめーちゃんは冷たいお茶を飲んでいたようですが、白ごはんもなしにお皿一杯のホルモンを2人で食べ切ったのでしょうか。そして、翌朝はおばあちゃんに見つかったりしたのでしょうか。
いずれにしても、昼間にみんなでワイワイ食べるよりも数段おいしく感じられる秘密の夜食だったことは間違いありませんね。
宮田ナノ /大和書房『もしもし、こちらは夜です』「第3話 いとことの夜ふかし」より
宮田先生が食べたホルモンの正体を探っていて群馬の豚ほるもん文化を知った時は「これ! 絶対これでしょ!」と鼻息を荒げました。
でも、再現を経て再度ページを読み返してみると、もしかしたら違っていたかも? と考えさせられることに。その理由は…。
① 焼くシーンで「脂すごっ」となっている →豚ホルモンは下茹でするので脂はほぼ出ない。
② ホルモンの形状が丸い感じ →豚ホルモンはどっちかというと細長い感じ。
うーん、これは豚ホルモンではなく牛のマルチョウあたりだったりするのかも? この答えはきっとわからないままでしょうが、1冊の素敵な漫画を通して群馬の食文化の一端を知ることができたのはラッキーでした。マルチョウ焼きも今度やってみます!
※記事の情報は2025年6月3日時点のものです。
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